
この度、日本赤ちゃん学会第24回学術集会を、2024年8月24日 (土) − 25日 (日) に東京大学で開催することになりました。テーマは、「AIと歩む赤ちゃん学」です。近年、人工知能(AI: artificial intelligence)技術の急速な発展により、乳幼児を取り巻く環境やその研究方法は劇的に変化しました。本学術集会では、AI技術を通して見えてきた新たな赤ちゃん学を議論します。
AI技術は赤ちゃん学において、多岐にわたる貢献をしています。最も顕著なのは、計測・解析手法の革新です。AIを用いた高精度なデータ収集および解析技術により、乳幼児の行動や生理信号をミクロなレベルで検証できるようになりました。これにより、従来の手法では見過ごされがちだった微細な変化が捉えられ、発達における複雑な動態の理解が深化しています。
さらに、AIは乳幼児の行動実験における刺激としても活用されています。AI技術を用いて設計された動的でインタラクティブな刺激提示システムは、乳幼児の注意や反応を自然な形で引き出し、より統制された実験デザインを可能にしました。これにより、連続的で多様な発達現象を、よりシステマティックに捉えることが可能となっています。
そして、AIが赤ちゃん学にもたらしたもう一つの重要な貢献は、発達のモデル化手法としての応用です。神経回路モデルやロボティクス技術を駆使して、乳幼児の発達過程をシミュレーションし、予測モデルを構築することで、発達の機序を構成的に解明しようとする研究も進んでいます。多様な現象の解析だけでは困難な発達原理の解明に、AIを用いたモデル化研究が重要な手がかりを提供しています。
このように、AIの進展は赤ちゃん学の研究手法を革新し、従来の枠組みを超えた新たな知見をもたらしています。本学術集会では、これらの先端的な研究成果や技術の共有を通じて、赤ちゃん学のさらなる発展を目指して議論を深めていきます。
ご参加の皆様には、活発な討論と知識交換を通じて、有意義な時間を過ごしていただけることを期待しております。また、この学術集会が皆様の研究活動を促進し、新たな協働の機会を創出する一助となることを願っております。
日本赤ちゃん学会第24回学術集会 大会長
東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構 特任教授
長井 志江